一見すると「半分も天引きされるのか」と驚くかもしれない。しかし、この天引きシステムこそが力士生命と引退後の生活を守る命綱になっている。
大相撲の懸賞金は税法上「事業所得」または「一時所得」に分類され、年間で数千万円単位の懸賞金を稼ぎ出す関取には高額な所得税や住民税が課される。かつて昭和の時代、現金をそのまま使い果たしてしまい、確定申告の時期に納税資金がショートする力士が後を絶たなかった。そこで導入されたのが、相撲協会による強制的な事前積立システムだ。
協会が預かった積立金は、力士が翌年支払うべき税金の納税資金として充当され、引退時に残額があれば退職金の一部として一括返還される。土俵上で手刀を切って受け取る3万円は「即座に使える小遣い兼ご祝儀」、裏に回る3万円は「未来の税金と生活保障」。この二段構えの構造により、荒波の勝負の世界でも生活破綻を防ぐセーフティネットが機能している。