贅沢感のある厚切りステーキの切り方には、プロならではの緻密な計算が存在します。分厚い肉を豪快に直角にストンと切り落とすと、一切れごとの断面積が狭くなり、口に運んだ瞬間の舌触りが重くなりがちです。そこで威力を発揮するのが、和食の技法を応用した「ステーキのそぎ切り」です。
包丁の刃を約45度に寝かせ、手前に引くようにしてスライスするそぎ切りを取り入れると、断面の表面積が広がり、口に含んだ瞬間に肉汁が舌全体へ一気に広がります。繊維を斜めに断ち切ることで噛み心地がより軽やかになり、厚みのある肉でも驚くほど柔らかな咀嚼感を得ることができます。
ここで絶対に避けるべきなのは、「焼き上がり直後のカット」です。高温状態の肉を切ると、内部に閉じ込められていた肉汁が一気にまな板へ流れ出てしまいます。焼き上がった肉はアルミホイルに包み、常温で約3分〜5分間休ませるのが鉄則です。内部の圧力が落ち着き、肉全体に肉汁が行き渡ったタイミングを見計らって包丁を入れることで、ジューシーな旨味を一滴も逃さずに閉じ込めることができます。