彼がこれまでのキャリアで演じてきた役柄は、決してスポットライトの中心ばかりではない。しかし、画面の隅に映り込むわずかな仕草や、主役の言葉を受け止める一瞬の間において、彼は常に作品全体の空気をコントロールしてきた。この「受けの芝居」で培われた鋭烈な人間観察眼こそが、監督としての彼の最大の武器になっている。
自らカメラの前に立ち続けてきたからこそ、役者がどの瞬間に不安を感じ、どこで嘘の演技に逃げてしまうのかを誰よりも熟知している。現場で彼が指示を出す際、大声で主張することはめったにない。代わりに役者の呼吸に寄り添い、感情が自然に湧き出す瞬間を静かに待ち続ける。この粘り強いアプローチが、演者の隠された素顔を引き出していく。