パイナップルという名前は、見た目と香りをストレートに反映させた造語です。英語の「Pineapple」は、トゲトゲとした外見が松ぼっくり(Pine cone)に酷似していたこと、そして中身がリンゴ(Apple)のように芳醇で甘美な香りを放っていたことに由来します。中世英語において「Apple」は単に特定のリンゴを指すだけでなく、「果実全般」を意味する言葉として広く使われていた歴史的背景があります。
一方で、ヨーロッパの多くの国や南米では、パイナップルを「アナナス(Ananas)」と呼びます。これは原産地である南米パラグアイ水系に暮らしていた先住民族トゥピ・グアラニー族の言葉で「優れた果実(ナナ)」を意味する呼称に由来しており、学名も『Ananas comosus』と命名されています。つまり、学術的・国際的には「アナナス」、英語圏および日本の日常流通では「パイン」「パイナップル」と呼ばれるという住み分けが成立しています。
植物としての構造も極めて特異です。パイナップルはパイナップル科(ブロメリア科)の多年草で、樹木に実がなるのではなく、地面から放射状に伸びた厚い葉の中心から太い茎が伸び、その頂点に1株からたった1個だけ結実します。驚くべきことに、パイナップルの実は1つの果実ではありません。開花した数十個から百数十個もの紫色の小花が受粉せず肥大化し、密集してひとつの塊に癒合した「集合果(多花果)」です。表面に見える亀甲状のウロコ1つ1つは、かつて咲いていた花ひと粒ずつの痕跡なのです。