大相撲の歴史において、これほど華やかな相撲一家が存在しただろうか。父は名関脇として名を馳せた鶴ヶ嶺昭男。その薫陶を受けた長男の鶴嶺山、次男の逆鉾昭廣、そして三男の寺尾常史(後の錣山親方)。「井筒3兄弟」と呼ばれた彼らは、昭和から平成へと移り変わる角界のど真ん中で眩い光を放った。
とりわけ次男の逆鉾が見せた相撲巧者ぶりは群を抜いていた。鋭い立ち合いから一気に深くもろ差しを果たす技術。相手の重心を浮かせ、一瞬の隙を突いて寄り切る速攻相撲は、父親譲りの職人技そのものだった。甘いマスクと激しい気迫のギャップも相まって、当時の大相撲中継では毎場所のように主役級の扱いを受けた。兄弟でありながら互いにライバルとして切磋琢磨した日々の記録は、現代でも色褪せない。