橋田壽賀子さんの代表作を語るうえで欠かせないのが、1983年に放送されたNHK連続テレビ小説『おしん』です。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%という驚異的な記録を打ち立て、日本のみならず世界数十カ国で社会現象を巻き起こしました。
この『おしん』の誕生秘話には、一通の手紙が深く関わっています。明治生まれの女性から寄せられた「誰にも言えなかった苦難に満ちた半生」を綴った手記を読んだ橋田さんは、名もなき女性たちの忍耐と強さをドラマとして後世に残さなければならないと直感。自らの戦争体験や下積み時代の悔しさ、そして女性の底力をすべて注ぎ込み、不朽の名作を書き上げました。
さらに1990年からは、TBS系で『渡る世間は鬼ばかり』の放送がスタート。長台詞を多用した独特の会話劇スタイルと、日常の家族関係に潜む葛藤をリアルに描いた本作は、30年近くにわたって愛される国民的長寿シリーズとなりました。若い頃の挫折と観察眼、そして夫との温かな暮らしの記憶が、彼女の脚本に深みと説得力を与え続けたのです。