順風満帆に見えたキャリアに転機が訪れたのは、1990年代半ばのことだ。幼少期に母を亡くし、男手一つで育ててくれた最愛の父・駿吉さんがアルツハイマー型認知症を発症したのである。最愛の父を他人の手に預けたくないという強い思いから、彼女は芸能界の第一線を退き、自ら在宅介護を行う道を選んだ。
介護は過酷を極めた。昼夜を問わない徘徊、記憶の混濁、感情の激しい起伏。かつて頼もしかった父親が次第に自分を認識できなくなっていく現実に直面しながら、山口さんは献身的に父を支え続けた。メディアで見せていた華やかな笑顔の裏で、彼女は終わりの見えない介護疲労と孤独な闘いを続けていた。
自身の睡眠時間を削り、仕事を制限し、父のためにすべてを捧げた日々。2006年に父が他界したとき、彼女に残されたのは深い哀しみと、張り詰めていた糸が切れたような虚脱感だった。