豊洲市場の貝類専門の仲卸業者および銀座の割烹料理長への取材において、家庭での下処理で頻発している「盲点」が明らかになりました。
第一のミスは、「夏場だからと冷蔵庫に入れて塩抜きしてしまうこと」です。冷蔵庫内の温度(3〜5℃)は、はまぐりにとって冬眠レベルの極低温です。冷え切った環境では代謝が極端に低下し、殻を閉じたまま微動だにしなくなります。室温が高い夏場は、直射日光の当たらない涼しい脱衣所や廊下の隅に置き、保冷剤を容器の横(水の中ではなく外側)に添えて18〜20℃をキープするのがプロの技術です。
第二のミスは、「ボウルの中で重ねて放置すること」です。家庭用キッチンの省スペースを優先して深いボウルを使い、重なり合った状態で塩抜きをすると、下段の貝が上段の吐いた砂をそのまま吸い込みます。「半分は砂が抜けていたのに、残りの半分がジャリジャリだった」という不揃いな現象は、この配置ミスによって引き起こされます。
第三のミスは、「潮干狩りの貝とスーパーの貝を同じ時間処理すること」です。現代の流通網に乗るスーパーのはまぐりは、出荷元の水槽である程度砂抜き処理がなされています。過度に長時間の塩抜き(半日以上など)を行うと、かえって自己消化が進み、身が痩せて旨味が損なわれます。購入時のラベル表示を確認し、養殖・畜養品であれば2時間程度の適正時間で切り上げることが肝要です。