読書コミュニティ(読書メーター、SNS、知恵袋)に寄せられた何千件もの生の声や、大手書店チェーンのフロア担当者への取材データを精査すると、読者が実際に体感しているリアルなメリット・デメリットが浮き彫りになります。
文庫派の読者から圧倒的支持を集めるのは、通勤電車内やカフェでの取り回しの良さです。「満員電車で片手吊り革の体勢でもストレスなく読める」「スーツのポケットや小さなショルダーバッグに収まる」という日常の機動性は、四六判のハードカバー単行本では決して得られない利便性です。
しかし、文庫本愛好家が口を揃えて指摘するデメリットが紙質と耐久性の違いに起因する経年劣化です。文庫本で使用される用紙はコスト削減と軽量化のため酸性紙や薄手の機械すき紙が多く、購入から5〜10年が経過すると小口(本の断面)が茶色く変色したり、日焼けによる色褪せが顕著に進みます。また、文字フォントのサイズが単行本に比べて小さく行間も詰まっているため、シニア層や長時間の読書では目が疲れやすいという肉体的な負担も報告されています。
対照的に単行本派からは、「ページをめくる際の紙の腰の強さ、手触り、本を開いたときのインクの匂いそのものが作品の一部」「本棚にずらりと並べたときの背表紙の風格と所有欲の満たされ方は単行本でしか味わえない」という、物質としての本に対する強い愛着が語られます。単行本は中性紙が使われることが多く、適切な室内環境であれば数十年が経過しても変色しにくいという保存上の優位性を持っています。