乾物売り場で最も頻繁に目にする「どんこ(冬菇)」と「香信(こうしん)」。これらを「椎茸の品種名」と誤認している消費者は少なくない。しかし、農林水産規格や乾椎茸業界における分類上、これらは同一の原木や菌床から収穫された椎茸の「傘の開き具合」および「肉厚の度合い」による選定規格である。
寒冷期にじっくりと時間をかけて育った椎茸は、傘が開ききらず肉厚な状態を保つ。一方で気温が上昇すると成長が早まり、傘は素早く平らに開いていく。収穫時期とタイミングによる形状の違いが、そのまま乾燥後の等級へと直結している。
主な乾燥規格の分類と見分け方は以下の3つに大別される。
- 冬菇(どんこ):傘が5分〜6分開きの状態で収穫されたもの。全体が丸みを帯びて縁が内側に強く巻き込んでおり、圧倒的な肉厚感と弾力のある歯ごたえが特徴。特に冬場の厳寒期に育ち、傘の表面に白い亀裂(ひび割れ)が花のように美しく走った最高級品は「花冬菇(はなどんこ)」と呼ばれ珍重される。
- 香菇(こうこ):冬菇と香信の中間に位置する規格。傘の開きが6分〜7分程度で、肉厚さと戻しやすさのバランスに優れている。日常使いの煮物から炒め物まで幅広く重宝される万能型。
- 香信(こうしん):傘が7分〜8分以上開き、平らに広がった状態で収穫されたもの。肉薄ではあるものの傘の表面積が広く、芳醇な香気を放つ。水戻しにかかる時間が短く、スライスや細切りにして使う料理に極めて適している。
「冬菇=高級で優れている」「香信=安価で劣る」という単純な優劣ではない。肉の厚みを生かして椎茸自体を主役に据える煮物やステーキには「冬菇」が最適であり、ちらし寿司、炊き込みご飯、茶碗蒸しのように他の具材と馴染ませつつ出汁と香りを全体に行き渡らせたい場合には「香信」が圧倒的なパフォーマンスを発揮する。