田畑智子の女優人生の幕開けは、まさに劇的だった。当時わずか12才、芝居の経験など一切なかった彼女を抜擢したのは、日本映画界の名匠として知られる相米慎二監督だ。1993年公開の映画『お引越し』は、両親の離婚に直面する少女の複雑な心理を繊細かつ大胆に描いたヒューマンドラマの名作として、今なお語り継がれている。
オーディションで約800人の中から選ばれた田畑智子は、京都弁の自然なイントネーションと、カメラの前で一切物怖じしない度胸を披露。スクリーンの中で爆発させた感情の起伏と圧倒的なリアリティは、国内外の映画関係者をうならせた。同作での快進撃によって、日本アカデミー賞協会が主催する日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の映画賞を総なめにする。天才子役としてその名を刻んだ瞬間だった。