「この動画が私の遺言です」。スマートフォンで撮影した映像に、そう語りかける高齢者。しかしこの映像に法的効力はありません。
民法は、遺言の方式について厳格な要式性を要求しています。自筆・公正証書・秘密証書のいずれかの形式を満たさない限り、どれほど明確な意思表示でも法的には「遺言」と認められません。
2017年、ビデオメッセージによる財産分割の意思表示が争われた裁判で、最高裁は「録音・録画による遺言は民法の定める方式に該当しない」と明言しました。ただし補足意見として、「遺言者の真意を探る参考資料としての価値は認められる」とも述べています。
テクノロジーの進化は、法制度に新たな課題を突きつけています。エストニアではデジタル遺言が法制化され、ブロックチェーン技術で改ざん防止が図られています。日本でも将来、デジタル遺言が認められる可能性はありますが、現時点では紙と署名・押印が絶対条件です。