昭和から平成にかけて、山下清といえば芦屋雁之助のイメージが完全に定着していた。そのあまりにも巨大な看板を引き継ぐことは、いかなる役者にとっても挑戦というより、むしろ無謀な賭けに近かったはずだ。2007年、その重責を担ったのが塚地だった。世間は当初、「バラエティ番組の人気者がどこまでやれるのか」と懐疑的な目を向けていた。しかし、彼が画面に現れた瞬間、その不安は一瞬で吹き飛ぶことになる。
塚地が演じた清は、単に外見を模倣したものではなかった。吃音の話し方や独特の歩き方といった記号的なディテールを完璧にトレースしつつも、その奥にある「純粋無垢な魂」を内側から滲み出させていたのだ。雁之助版が持つ「昭和の頑固で温かいオヤジ」的なニュアンスに対し、塚地版は「傷つきやすく、それゆえに他者の痛みに敏感な青年」という、より繊細なアプローチを選択した。これが、新時代の『裸の大将』としてのアイデンティティを確立する決定打となった。