多くのメーカーが効率重視で直列・V型へ舵を切るなか、スバルとポルシェが水平対向エンジンを捨てない背景には、単なる伝統の固執ではなく、冷徹な「技術的優位性の確立」と「ブランド価値の防衛」があります。
スバルの場合、その真価は「シンメトリカルAWD」との完全な調和にあります。エンジンからトランスミッション、プロペラシャフト、リアデフに至るパワートレインが、車体の中心線に対して左右対称かつ一直線にレイアウトされています。これにより、前後左右の重量バランスが均等化され、悪路や雪道での卓越した接地性と、長距離走行における疲れにくさを実現しています。
加えて見逃せないのが「パッシブセーフティ(受動衝突安全)」の優位性です。前面衝突の激しい衝撃を受けた際、全高の低い水平対向エンジンはキャビン(客室)を押し破るのではなく、車体フロア下へと潜り込むように脱落する設計が施されています。この構造こそが、世界各国の衝突安全アセスメントでスバル車がトップクラスの評価を獲得し続ける強固な武器となっています。
一方、ポルシェはフラッグシップ「911」のリアエンジン・リアドライブ(RR)レイアウトにおいて、水平対向以外の選択肢を持ち得ません。リアオーバーハングにエンジンを搭載する際、背の高い直列やV型を置けば重心位置が極端に高くなり、運動性能が破綻してしまいます。薄型の水平対向6気筒を路面すれすれの低い位置に搭載することで、強烈なトラクションと異次元のコーナリング性能を成立させています。