検索バーを賑わせる謎のフレーズ、その発火点は世界最大の動画配信サービスであるNetflixで配信され、瞬く間に世界ランキングを駆け上がった一本のインド映画だ。アラブの砂漠で家畜以下の扱いを受けながら生き延びた青年の手記が、今まさに国境を越えて人々の胸を突き刺している。
なぜ「ドバイ」と「ヤギ」が結びついたのか。中東への出稼ぎと聞けば、多くの日本人はドバイ(アラブ首長国連邦)の近代都市を連想する。しかし、物語の舞台となったのは、地図の空白地帯とも呼ぶべき見渡す限りの赤茶けた荒野だ。豊かな生活を夢見て海を渡ったはずの男が送り込まれたのは、電話も通じず、逃げ場もない孤立無援のヤギ牧場だった。
現代の映画界において、本作がこれほどまでに熱狂的な支持を集め、議論を巻き起こし続けている理由は単なる娯楽作の枠に収まらない異常なまでのリアリズムにある。スクリーンから漂う熱風、渇き、絶望。そのすべてが、かつて現実に起きた出来事のトレースなのだ。