棒茶が「庶民の普段着のお茶」から「日本を代表する銘茶」へと飛躍した背景には、ひとつの劇的なドラマが存在する。1983年、石川県で開催された全国植樹祭に伴い、昭和天皇が石川を行幸された際のエピソードだ。
宿泊先で供する最高峰の茶を求められた老舗・株式会社丸八製茶場(石川県加賀市)の茶師たちは、試行錯誤の末に一番茶の良質な茎だけを極めて浅く焙じ上げた至極の一品を創り出した。澄み切った黄金色、雑味のない軽やかな甘み、そして鼻腔を抜ける圧倒的な芳香。昭和天皇がその味わいを深く賞賛されたことをきっかけに、この茶は「献上加賀棒茶」と名付けられ、全国にその名を轟かせることとなった。