「恋のABC」のような一本道の段階モデルには、現代の視点から見直すべき大きな盲点が存在します。それは「A(キス)を許したのだから、次は当然B(身体への接触)を受け入れるべきだ」「交際期間が長くなれば自動的にCへ進むのが義務である」という、不可逆的かつ強制的な進展圧力を生みやすい点です。
昭和後期から平成にかけての恋愛指南書やメディアでは、男性側が段階を強引に引き上げることや、女性側がそれを受け入れることが「男らしさ」「女らしさ」の文脈で語られる傾向がありました。しかし、これは個人の意思を無視したバウンダリー(境界線)の侵害につながりかねない構造的リスクを内包していました。
令和の恋愛観において決定的に重要なのは、「キスに同意したからといって、その先の行為に同意したわけではない」という個別同意の原則です。進展の順番がA→B→Cと一直線である必要はなく、互いの心理的安全性と納得感に基づき、立ち止まることも後退することも完全に自由であるという認識が、健全なパートナーシップの大前提となっています。