映画『怒り』における広瀬すずの演技が映画関係者や観客から異例の絶賛を受けた最大の理由は、「作られた演技」を完全に超越した感情の剥き出し感にあります。当時、『海街diary』や『ちはやふる』で国民的な清純派ヒロインとしての地位を確立していた彼女が、一切のフィルターを外して人間の生々しい傷口を晒した衝撃は計り知れません。
特に批評家筋から高く評価されたのが、無人島の荒涼とした岩場で田中への怒りを爆発させる「叫びのシーン」です。台本に書かれた台詞をなぞるのではなく、肺の底から絞り出すような慟哭、震える肉体、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった無防備な表情は、観客に「一人の少女が世界に対して放った魂の抗議」を直感させました。この演技により、第40回日本アカデミー賞において優秀助演女優賞を受賞。当時18歳という若さで、同年代のトップランナーから日本映画界を背負う本格派表現者へと飛躍を遂げたのです。
映画ライターや劇場鑑賞者からは、「彼女の叫びを聞いた瞬間、映画館の空気が凍りついた」「演技の上手い下手ではなく、人間の尊厳が傷つけられた瞬間の痛みが直接伝わってきた」という声が多数寄せられました。彼女がスクリーン越しに放ったエネルギーは、エンターテインメントの枠を遥かに超えたリアリティを持っていたと結論付けられています。