アニメ史における最大のミステリーの一つが、1973年に約半年間だけ放映された「日本テレビ版ドラえもん (1973年)」の存在だ。日本テレビ系列で制作されたこの最初のアニメ化作品は、現在広く知られているTVアニメとはまったく異なるキャストと演出方針で世に送り出された。
前半のドラえもん役を務めたのは、豪快で包容力のある演技で知られる富田耕生氏。当時のキャラクター像は「面倒見の良いおっさん」のような手厳しい頼もしさがあり、下町の親分肌といった趣すら漂わせていた。しかし、放映局や制作会社をめぐる諸事情や商業的苦戦により、わずか26回(全52話)で放送は終了。フィルムの多くが失われ、再放送やソフト化も長年見送られてきたため、アニメーション産業の発展期に埋もれた「幻の作」として伝説化している。