300年以上の歴史を紡ぐ孔子への礼拝儀式
多久市のイベントを語る上で外せないのが、宝永5年(1708年)に多久第四代領主・多久茂文によって創建された「多久聖廟」です。ここで毎年春(4月)と秋(10月)に行われる「釈菜(しゃくさい)」は、儒教の祖である孔子とその高弟(四配)の霊を祀る厳粛な儀式です。日本国内でもこれほど当時の形式を忠実に受け継いでいる例は極めて稀です。
当日は、色鮮やかな儒服に身を包んだ祭官たちが登場します。雅楽の音色が境内に響き渡る中、野菜や生肉といった独特のお供え物(牲牢・せいろう)が捧げられます。張りつめた緊張感と静寂。見学者はまるで江戸時代の学問所にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。
伝統舞踊と地域が一体となる見どころ
釈菜の当日には、儀式だけでなく地元小中学生による「腰鼓(ようこ)の舞」や「釈菜の舞」が奉納されます。中国の伝統的なリズムを再現した腰鼓の舞は、軽快な太鼓の音とともに色鮮やかな衣装が躍動し、訪れた見物客から大きな拍手が送られます。
境内の周りには地元の特産品を販売する露店やバザーも並び、厳かな神事の緊張感と、地域の祭礼らしい温かみが心地よく同居しています。