益子焼といえば、温かみのあるぼってりとした素地に、柿釉や黒釉を施した実用的な民藝食器を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、伊藤剛俊が足を踏み入れたのは、その伝統を踏襲しつつも全く異なる地平でした。
1981年に生まれた伊藤は、益子町にある地元の製陶所で4年間にわたる下積みを経験しました。ここで泥に触れ、ろくろを回し、窯を焚く基礎的な技術を体に叩き込みます。しかし、彼が求めたのは量産される日常雑器ではなく、己の美意識を極限まで投影できる無二の立体造形でした。
4年間の修業時代と独立への決意
製陶所での修業は、土という素材の性質を体に覚え込ませる貴重な時間となりました。土の乾燥速度、焼成時の収縮率、刃物を入れたときの抵抗感。これらを完璧に把握したからこそ、後の複雑な構造美が可能となったのです。
2006年、伊藤は自らの表現を追求するために独立を果たします。伝統的な益子焼の技法や様式に拘泥せず、磁土(じど)という硬質で繊細な素材を選択したことが、彼の大きなターニングポイントとなりました。