山崎博の名を世界的なものとした代表作、それが1970年代後半に開始された『HELIOGRAPHY(ヘリオグラフィー)』シリーズである。語源はギリシャ語の「helios(太陽)」と「graphy(描くこと)」。つまり太陽自身に自らの姿を描かせようとする壮大な試みであった。
山崎は極めて濃いND(減光)フィルターをレンズの前に装着し、三脚で固定したカメラのシャッターを数時間開け放つ手法を採用した。肉眼で直視できない強烈な日光は、過度の露光によって印画紙上で反転し、漆黒の空に白く眩い光のラインとなって現れる。あるいはその逆の表情を見せる。
光を「蓄積」する独自の撮影手法
この撮影において、山崎自身の作為的な情緒は最小限にまで抑え込まれた。カメラを向け、フレームを設定し、露光時間を決定する。あとは天体の運行という自然界の絶対的なシステムにすべてを委ねる。出来上がったイメージは、写真が単なる「瞬間の切り取り」ではなく、「時間の蓄積」である事実を鋭く突きつけた。