工場での生活において、成田は元芸能人という過去をいっさい鼻にかけなかった。他の作業員と変わらぬ時間に出社し、泥泥にまみれながらボルトを締め、機械の不調と向き合う。休憩室で流れるJ-POPを聴きながらも、かつてヒットチャートの頂点に立っていた記憶を自ら語ることは一度もなかったという。
現場の関係者が明かしたエピソードは胸を打つ。作業の合間に見せる彼の指先には、過酷な肉体労働のタコとともに、長年ギターの弦を押し込んできた者特有の硬い痕跡がくっきりと残っていた。仕事を終えてアパートへ戻ると、彼は静かにアコースティックギターを抱え、小さな音で弦を弾いた。誰に見せるためでもない。ただ自分の生きている証を確かめるためだけの旋律。工場で流した汗と密やかに育まれた情熱こそが、のちの奇跡的な芸能界復帰を支える強固なバックボーンとなった。