津田健次郎という表現者の根幹を語る上で欠かせないのが、アニメ史に刻まれる強烈なキャラクター群です。アニメファンによる歴代キャラクターランキングでも常に上位を独占する名作の数々は、彼の声が吹き込まれることで唯一無二の生命力を獲得してきました。
その代表格が、社会現象を巻き起こした『呪術廻戦』の七海建人(ナナミン)です。「労働はクソということです」「ここからは時間外労働です」といった名セリフに見られる脱力感と冷徹さ、そしてその奥底に秘めた大人としての責任感と優しさを、津田は計算し尽くされた低音の抑揚と息づかいで表現しました。第15回声優アワードで主演男優賞を受賞した際も、この七海建人役での圧倒的な説得力が高く評価されています。
また、彼のキャリアの決定的な転機となったのが『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人です。狂気すら孕んだ高笑い、圧倒的なプライド、ライバルである武藤遊戯への執念を轟かせる演技は、四半世紀が経過した現在もなお伝説として語り継がれています。さらに『ゴールデンカムイ』の孤高のスナイパー・尾形百之助では、感情を表に出さない怜悧な瞳の裏にある複雑な生い立ちと葛藤を、掠れたウィスパーボイスで見事に表現。『極主夫道』の龍(不死身の龍)では、元極道の凄みと主婦業への真摯な情熱のギャップをコミカルかつ迫力満点に演じ分け、国内外で爆発的な支持を獲得しました。