神社の主祭神として祀られているのは、鉱山や金属の神として知られる金山彦命である。一見すると、動物霊の調伏とは無縁に思える製鉄の神がなぜ憑き物落としの本尊となったのか。そこには古代の鉱山採掘技術者集団と、山岳信仰の修験者たちが融合した独自の歴史的経緯が存在する。鉄の刃が魔を断ち切るという象徴性が、悪霊退散の霊力へと転化していったのだ。
多くの神社が神社本庁の傘下で均一化された祭祀を執り行う中、徳島県三好市の山中に息づく祈りの形式は極めて独特だ。社殿の奥深くで執り行われる祝詞の抑揚や所作には、陰陽道や密教の呪法が混然一体となった古式が色濃く残る。中央の教義に回収されることなく、山民の切実な要請に応え続けてきた孤高の系譜が、境内の隅々に独特の重厚な空気を醸成している。