降圧剤を飲み始めてから数週間、あるいは数カ月経ってから現れる体の異変には特有のパターンがある。代表的なものが起立時のふらつきやめまいだ。これは薬が効きすぎて急激に血圧が下がる「過降圧」や、立ち上がった瞬間に脳への血流が一時的に低下する起立性低血圧によって引き起こされる。特に起床時や入浴後、急に立ち上がった瞬間のふらつきは転倒や骨折のリスクに直結する。
もう一つの典型例が、痰を伴わない乾いた咳、いわゆる「空咳」だ。ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)を服用している患者の約1割から2割に見られる現象で、気道粘膜にブラジキニンなどの物質が蓄積することが原因とされている。風邪薬や咳止めを飲んでも一向に治まらず、夜間の睡眠を妨げる原因になることも多い。咳の症状が降圧薬に起因していると気づかず、長期間にわたり呼吸器内科を受診し続ける患者も珍しくない。
夕方になると靴がきつくなるような下肢のむくみや、歯肉の腫れも注意すべき兆候だ。これらは末梢血管を広げる作用を持つカルシウム拮抗薬でしばしば観察される。毛細血管の内圧が上昇し、組織の隙間に水分が漏れ出すことで生じる。単なる塩分の摂りすぎや運動不足と誤認されやすいが、投薬量の調整や他系統の薬剤への変更で速やかに改善するケースが多い。