祇園の喧騒をすり抜け、のれんをくぐると、そこには静寂と職人の技が交錯する至高の空間が広がっている。名店「ぎおん徳兵衛」が誇る甘味の真髄、それが希少な本わらび粉を惜しみなく使用した本わらび餅だ。口に含んだ瞬間に解けるような官能的な喉越しと、濃密な漆黒のコク。この食感を形作るのは、職人が注文を受けてから鍋を火にかけ、練り上げる絶え間ない手仕事にほかならない。
連日長蛇の列ができるこの名店だが、現地取材で見えてきた穴場の時間帯がある。開店直後の午前10時台、あるいは夕暮れ時である16時半以降が狙い目だ。特に平日の夕刻は、花見小路の行灯に灯がともる美しい情景とともに、比較的スムーズに入店できる可能性が高い。氷を敷き詰めた器に盛られた温かく冷たい不思議な本わらび餅を、和三盆と黒蜜の二種の味わいで堪能する時間は、旅の満足度を間違いなく最高峰へと引き上げる。