成形された器は、しっかりと乾燥させた後に約800℃で「素焼き」されます。水分が抜け、崩れにくくなった状態の器に施されるのが釉薬(ゆうやく)です。
釉薬は、金属元素を含む長石や灰などの混合液です。焼き上がりの色を予測しながら、筆で塗る、浸す、あるいは噴射するなどして素地に塗布します。しかし、最終的な発色は炎の性質に委ねられます。
酸化焼成と還元焼成の神秘
本焼きの工程では、窯の中の酸素量によって作品の表情が劇的に変わります。
酸素を十分に供給して燃焼させる「酸化焼成」では、釉薬中の成分がそのまま素直に発色し、クリアで澄んだ色合いが得られます。一方、煙突のダンパーを絞り、酸素不足の状態で燃焼させる「還元焼成」では、炎が土や釉薬の中の酸素を奪うため、深みのある複雑な変化(窯変)が生じます。同じ銅釉であっても、酸化では鮮やかなグリーンに、還元では深みのある赤(辰砂)へと変化するのです。人は土を整え、釉をかける。しかし最後の仕上げは炎に託す。この人間を超えた力への委ねこそが、作陶の魅力です。