マティーニの誕生には諸説が存在する。19世紀後半、アメリカのカリフォルニア州マルチネス(Martinez)で提供されていたカクテルが原型であるという説や、イタリアのベルモットメーカー「マルティーニ・エ・ロッシ社」の名に由来するという説が有力だ。
20世紀初頭、ロンドンのサヴォイ・ホテルでチーフバーテンダーを務めたハリー・クラドックが編纂した『サヴォイ・カクテルブック』によって、ドライ・マティーニのレシピは世界的な定番としての地位を確立した。時代を経るにつれて甘みを抑えた「ドライ化」が進み、よりシャープで研ぎ澄まされたカクテルへと進化していった。
王様と呼ばれる所以は、レシピの普遍性だけではない。世界中のバーテンダーが自身の技術を試す指針としてマティーニを位置づけており、「マティーニを飲めばそのバーの格がわかる」と言われるほどの聖域となっているからだ。