紙を折り、糸で綴じ、糊で固める。本を作る工程そのものは数百年もの間、大きく変わっていません。しかし、工業化された現代の製本工場では効率と均一性が最優先されます。edition nordの試みは、この効率主義に対する洗練された静かな反論と言えます。
2009年にグラフィックデザイナーの秋山伸によって立ち上げられたこのレーベルは、デザインから印刷のディレクション、製本、流通に至る全工程を自らの手元に引き戻しました。ここで生み出される本は、単に情報を伝える媒体ではありません。紙の質感、重量、開いたときの抵抗感、さらには裁断面の手触りに至るまで、すべてが緻密に計算された「五感で鑑賞する彫刻」です。
小規模だからこそ可能な実験的なアプローチは、日本国内にとどまらず、海外のアートブック収集家やキュレーターの間でも高く評価されています。本という形式が持つ可能性を限界まで押し広げる作業が、日々生み出されています。