辰巳の表現領域は、留まることを知らない。近年の個展を振り返ると、その視座がより深化していることが解る。
2022年の個展「Fragments」(roidworksgallery)では、バラバラに解体された風景の断片に着目。2023年の「Sky, Shadow, Alley」(SCÈNE)では、空と路地、影の関係性をよりシャープに追い求めた。
そして2024年、roidworksgalleryで開催された「Blur」では、ピントがぼやけるような輪郭の輪郭線にアプローチした。明確な輪郭をあえて揺らすことで、デジタル画像の解像度の限界と、人間のあいまいな記憶の領域を重ね合わせた。
同年にSOM GALLERYで開催された「Traces of shifting dust」や、2026年の個展「Unformed 名のない世界」(roidworksgallery)へと続く展開は、彼女の探求が単なる「街角の風景画」を超え、世界が存在する原型そのものへと向かっていることを示している。「名づけられる前の空間」を描き出そうとする挑戦だ。