地方都市における観光業の起爆剤として、軍艦島が果たしてきた経済的役割はきわめて大きい。しかし、世界遺産登録から10年以上が経過し、産業遺産観光は新たな局面に立ち至っている。過度な観光客の殺到がもたらす環境負荷や、限られた遺産領域の保護をどう両立させるかという過酷な命題だ。
単なる見物目的の観光から、産業史や労働環境の光と影を多角的に学ぶ探求型トラベルへのシフトが急速に進んでいる。観光消費を維持しながらも遺産の劣化を防ぐための入場規制やデジタル保護技術の導入は、今後の世界遺産保全における世界的なモデルケースとなりつつある。