「過去は消えない」――蒼い炎を撒き散らしながら言い放った荼毘(轟燈矢)の存在は、名門ヒーロー一家「轟家」の闇を全白日の下に晒した。父・エンデヴァーによる「オールマイトを超える子」を作るための「個性婚」、そして優秀な弟・焦凍の誕生によってすり減らされ、捨て置かれた長男の絶望。彼の全身を覆う不気味な皮膚の継ぎ目は、家族の歪んだ承認欲求が生んだ痛々しい自傷の痕跡だった。
荼毘の目的は勝利ではなく、社会の象徴たるエンデヴァーのメッキを剥がし、絶望の底に引きずり下ろすことだった。彼が自らの正体をテレビ中継で暴露したシーンは、作中屈指のトラウマ的衝撃を読者に与えた。ヒーロー社会が内包する「成果主義」と「家庭内のネグレクト」。彼が燃やしたのは、目の前の敵ではなく、光の裏に隠されていた社会の都合良い善意そのものだった。