「官邸主導」という言葉が定着した時代、その中枢を握っていたのは政治家本人だけではない。安倍晋三元首相を最も近くで支え、政策立案から与党調整までを主導したのが筆頭秘書官の今井尚哉氏をはじめとする官邸官僚たちだった。経産省出身の今井氏は、事実上の「陰の総理」として内閣官房の機構をフルに活用し、外交・経済政策の舵を切った。
従来の文脈であれば、政策決定の主導権は自由民主党の各部会や族議員にあった。しかし、安倍政権では主導権が完全に官邸側へシフトした。この構造転換こそが、長期安定政権を維持できた最大の原動力だったと同時に、強烈な忖度文化を生み出す土壌となったのである。