『魔法少女まどか☆マギカ』に登場する「見滝原市」は、特定の市区町村をそのままトレースした舞台ではありません。総監督の新房昭之氏や美術スタッフ、空間演出を手掛けた劇団イヌカレーが、国内外の実在する名建築や都市景観をパーツごとにサンプリングし、再構成したハイブリッド都市です。ここでは、ファンの間で特定されている主要な背景モデルを国内・海外に分けて詳細に紐解きます。
まず国内において、見滝原市の近未来的かつ幾何学的な景観の中核を担っているのが茨城県つくば市です。作中で印象的に描かれるガラス張りの回廊やペデストリアンデッキ、整然と並ぶ直線的な階段の数々は、「つくばセンター広場」や「つくばエキスポセンター」周辺の意匠と極めて高い合致を見せています。建築家・磯崎新氏が設計したつくばセンター広場のポストモダン建築群は、見滝原市の持つ「どこか冷徹で幾何学的な美しさ」を象徴する原風景となりました。
続いて、ファンが最も気になる「見滝原中学」のモデルですが、これは複数の近代建築のパーツが組み合わされています。学校の外観や無機質なキューブ構造のベースとなったのは、群馬県高崎市にある「群馬県立近代美術館」(こちらも磯崎新氏設計)です。美術館特有の立方体を基調としたフレーム構造や、広大な敷地に広がる池とガラスの対比は、劇中でまどかたちが通う先進的な校舎デザインへと見事に昇華されています。さらに、校舎内の巨大な吹き抜けやガラス張りの空中歩廊には、東京都の「東京国際フォーラム」や晴海トリトンスクエアのエッセンスが濃厚に反映されています。
一方、海外に目を向けると、魔女結界や『[新編] 叛逆の物語』で描かれた美しくも歪んだ世界観のルーツがドイツの中世都市群に存在することが判明しています。特に以下のスポットは、制作陣が視覚的インスピレーションを得た決定的なロケ地として知られています。
・コッヘム(ライヒスブルク城):モーゼル川沿いに佇む古城。城へと続く石畳の坂道や尖塔のシルエットは、劇中の象徴的な背景美術と見事に一致します。
・ローテンブルク・オプ・デア・タウバー:中世の面影を色濃く残す「プレーンライン」や城壁に囲まれた木組みの街並み。『叛逆の物語』で描かれた偽りの見滝原市の温もりあるヨーロッパ調市街地の直接的なモチーフです。
・ケルン大聖堂:ゴシック建築の最高峰であり、劇団イヌカレーが手掛けるコラージュ空間の尖鋭的な装飾モチーフとして随所に引用されています。