結論から言えば、古文書や神道上の由緒において、太宰府天満宮が「縁切り」を公式のご利益として掲げた事実は一切存在しない。ではなぜ、このようなジンクスが生まれたのか。その謎を解く手がかりは、境内の心字池(しんじいけ)に架かる三つの朱塗りの橋にある。
この橋は手前から「過去」「現在」「未来」の三世を表している。橋を渡る行為そのものが、参拝者自身の心を払い清める修験の歩みだ。過去の橋では己の過去の過ちや邪念を省み、現在の橋では踏みしめる足元を見つめ直し、未来の橋では希望を胸に抱く。このプロセスで「過去の不要な感情や悪習を断ち切る」という浄化が起こる。これがいつしか誤解され、「過去の人間関係を断つ」「恋人と別れる」という歴史伝承・都市伝説・神社縁起の文脈へとすり替わっていったのが真相だ。