秋の風が心地よくなる10月、街の静寂は一瞬にして歓声と熱気に包まれる。津市最大の伝統行事「津まつり」だ。豪華絢爛な八幡神社祭礼の山車や、郷土芸能「津唐人踊り」、勇壮な「安濃津よさこい」がメインストリートを埋め尽くす際、中心街に隣接する乙部もその熱波の余波を受け、独特の高揚感に満たされる。
現在、観光・インバウンド産業の回復に伴い、伝統的な祭礼文化を目当てに津を訪れる外国人旅行者の姿が増加している。ホテル需要がタイトになるなか、乙部周辺に点在する古民家を活用したゲストハウスや民泊施設が新たな受け皿として機能し始めた。単なる通過点ではなく、地元のディープな食文化や居酒屋のカウンターで地元住民と肩を並べて伊勢湾の海の幸を味わう——そんな「滞在型観光」の新たな拠点として、乙部の価値が再発見されているのだ。