伝統の重圧に縛られがちだったピッツァ界に風穴を開け、世界的な潮流を作った巨匠たちがいる。その筆頭が、カゼルタ近郊のカアッツォを世界屈指の美食都市へと変貌させたフランコ・ペーペだ。
彼は機械によるミキシングを一切拒否し、自らの手で生地を捏ねる原点回帰を選んだ。同時に、熱によって風味が損なわれがちなトマトソースやバジルのペーストを「焼き上がり後」に幾何学的に配置する手法を考案。クラシックなマルゲリータを再解釈したその一皿は、世界中のフーディに衝撃を与えた。
一方、ローマで切り売りピッツァ(ピッツァ・アル・タッリオ)の常識を覆したのがガブリエーレ・ボンチだ。「ピッツァ界のミケランジェロ」と称される彼は、古代小麦の復活や長期低温発酵を駆使し、パンのような気泡構造を持つ圧倒的な生地を作り上げた。そこに三ツ星レストラン顔負けの旬の食材を大胆に組み合わせ、ストリートフードを高級ガストロノミーの領域へと引き上げたのである。