ブロードウェイの翻訳ミュージカルでは味わえない、日本語の母音の響きと情緒に根ざした旋律。音楽座ミュージカルが観客の涙腺を激しく揺さぶる最大の理由は、徹底して「人間の魂の救済」をテーマに据えた脚本と楽曲設計にあります。
劇団の金字塔として名高いのが、1988年初演の『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』です。筒井広志の小説『アルファ・ケンタウリからの客』を原案に、純朴な青年作曲家・悠介とスリの少女・佳代の純愛、そして宇宙的視点から描かれる生の連鎖は、初演当時から熱狂的な支持を集めました。劇中歌「ドリーム」をはじめとする名曲群は、劇団の枠を越えて東宝などでもライセンス上演されるほど、日本ミュージカル史における不滅のクラシックとなっています。
さらに、福山庸治のコミックを原作にした『マドモアゼル・モーツァルト』(モーツァルトが実は女性だったという大胆な仮説に基づく人間賛歌)や、サン=テグジュペリの名著を独自の哲学的解釈で再構築した『リトルプリンス』(星の王子さま)など、音楽座ミュージカルの代表作はいずれも「他者との絆」や「自己の存在理由」という根源的問いを観客へ投げかけます。
これらの名作を支えているのが、演出家・プロデューサー・俳優・スタッフ全員が車座になって台本を一から磨き上げる「ワームホールプロジェクト」と呼ばれる共同創作システムです。既成の台本を機械的に再現するのではなく、演者一人ひとりが自身の人生観や実存的な葛藤を役に投影しながら台詞を練り直すため、劇空間には作り手の体温が宿った剥き出しのリアリティが充満します。