音羽屋の未来を語る上で欠かせないのが、長男・尾上菊之助との芸の継承劇である。菊五郎は息子に対して決して手取り足取り教え込むことはしない。自らの背中を見せ、同じ舞台で火花を散らすことで、芸の核を魂ごと手渡していく。父の至高の技を受け継ぎながら、果敢に新作や新演出へ挑む菊之助の挑戦を、菊五郎は誰よりも温かく、そして厳しい眼差しで見守っている。
伝統とは固定化された過去の遺物ではなく、時代とともに更新され続ける生きた潮流である。父から子へ、そして次世代の若手へと受け継がれる音羽屋の精神は、厳格な古典の枠組みを守り抜きながらも、常に革新の息吹を宿している。