福島県の中央に位置する商業都市、郡山市。ここにはかつて、数多くの映画館が軒を連ね、シネマ文化を謳歌した黄金時代があった。そのなかでもテアトル郡山は、洗練された作品ラインナップと心地よい音響空間で、地元の映画ファンから絶大な支持を集めた伝説の館である。
木造の味わい深い内装や、チケットカウンター越しに手渡された紙の半券。開演を告げるブザーの音とともに暗転する客席は、日常から非日常へと人々を誘う魔法の空間だった。旧館の記憶を語る往年のファンは「チケットを買い求める行列が路地にまで伸びていた」と懐かしむ。館内に充満していたポップコーンと古い革椅子の香りは、いまも世代を超えたノスタルジーとして語り継がれている。