氏治の代名詞とも言えるのが、本拠地である小田城の奪還劇だ。生涯で少なくとも9回城を奪われ、そのたびに奪還を果たしたという記録は、日本の戦国史上でも極めて珍しい。なぜ彼はこれほどまでに敗北を重ねても滅びなかったのか。
その秘密は、領民との深い絆にある。氏治が城を追われると、領民たちが自発的に兵糧を蓄え、復権のための手助けをしたと伝えられる。威圧や恐怖政治ではなく、圧倒的な「人徳」と「親しみやすさ」で人々を惹きつけた生き様。敗北しても悲壮感漂う全滅には至らず、どこかユーモラスで人間臭い復活劇を遂げるプロセスは、エンターテインメント作品として最高のカタルシスをもたらしてくれるだろう。