大日如来を肌に刻む際、最も慎重を期すべきは「金剛界」と「胎蔵界」のどちらを具現化するかという点だ。両界曼荼羅において対をなすこの二つの世界観は、結ぶ手の形、すなわち「印相(いんそう)」によって明確に区別される。
胸の前で左手の人差し指を右の手のひらで包み込む「智拳印(ちけんいん)」を結ぶのが金剛界大日如来だ。これは揺るぎない絶対の智慧を象徴し、精神的な強さや不動の決意を刻みたい者に好まれる。対して、膝の上で両手を重ね合わせる「法界定印(ほうかいじょういん)」をとるのが胎蔵界大日如来。こちらは万物を包み育む無限の慈悲を意味する。
どちらの印相を選ぶかによって、背中全体が放つ空気感は劇的に変化する。智慧の鋭さを求めるのか、慈悲の深さを背負うのか。己の内面と対話し、図案の方向性を定める作業こそが、この施術の真の始まりと言える。