誘拐犯と被害女児というレッテルを貼られた男女の、世間からは決して理解されない関係性を描いた『流浪の月』。このセンセーショナルな傑作が実写化された際、日本映画界に走った衝撃は凄まじいものがあった。
メガホンを取った李相日監督の執念に対し、主人公・家内更紗役の広瀬すずは自らのパブリックイメージをかなぐり捨てて全身全霊で挑んだ。世間の好奇の目、正義感を振りかざす無理解な善意、そして魂で結びついた者同士にしか見えない静謐な世界。広瀬すずが見せた息を呑むような迫真の演技は、観客の倫理観を激しく揺さぶり、映画という表現の持つ可能性を改めて証明した。