美しい極薄スライスを生み出すための主役となるのが、日本の家庭で最も親しまれている三徳包丁だ。刃物メーカーとして世界に知られる貝印株式会社の研究でも示されている通り、刃の鋭利さと食材に対する入射角が切り口のなめらかさを決定づける。刃先をまな板に固定するように軽く当て、刃全体のスライドを利用して手前にスーッと引く。力を込めて真下に押し潰す動作は禁物だ。
名門として名高い辻調理師専門学校の現場でも、包丁の重量としなりを活かした正確なストロークが徹底して叩き込まれる。西洋料理における繊細な千切り技術「ジュリエンヌ (Julienne)」の精度も、この基本の刃使いなくしては成立しない。包丁の腹を左手の指の第一関節に軽く添える「猫の手」を保ちながら、リズミカルに均一な薄さを刻む感覚を指先に覚えさせたい。