かつて熱狂的な支持を集めた映画『ハイ・フィデリティ』で描かれた、偏執的なまでに音楽を愛するスタッフと客が交わす独特の空気感。あの濃密な空間が、いま東京をはじめとする日本の店頭で再現されている。目当ての1枚を探し求めて棚をひたすらめくる行為――いわゆる「ディグ(掘る)」に没頭する人々の姿は、かつてないほど多様化している。
特に目を見張るのが、海外からのインバウンド客の多さだ。彼らが日本のショップを「聖地」と崇める理由は明快である。日本盤特有の帯(オビ)の保存状態の良さ、解説書の美しさ、そして前所有者たちの丁寧な扱いによる盤質の高さだ。大量生産・大量消費の波に晒されながらも、日本のアナログレコード文化は驚くべき純度で保存されてきた。棚を一枚一枚めくるたびに、過去の音楽遺産とダイレクトに対話するような感覚に包まれる。