首元を覆う襟の起源を遡れば、19世紀の船乗りやポロ競技者のワークウェアに行き着く。しかし、それを独自のスタイルへと昇華させたのは、いつの時代もカルチャーを牽引する異端児たちだった。象徴的なのは、アップル創業者のスティーブ・ジョブズである。彼が毎日着用していた黒のモックタートルネックは、世界屈指のデザイナー三宅一生が手がけた特注品だった。装飾を削ぎ落とし、思考のノイズを排除するための「制服」として、タートルネックは知性の象徴となったのだ。
一方で、圧倒的な色気と行動力を体現したのが映画『007 スペクター』におけるジェームズ・ボンドの着こなしだ。ダニエル・クレイグ扮するボンドが纏ったハイゲージのニットは、激しいアクションの最中でも崩れない洗練された肉体美を強調した。メンズファッションの歴史において、タートルネックは常に「語らずして意志を語る男たち」の肌に寄り添ってきた。