手紙の相手となったのは、当時まだ20代半ばの野心的なベルギー人編集者、アルベール・ラクロワだった。ラクロワは莫大な前払金を支払って『レ・ミゼラブル』の出版権を獲得し、まさに社運を賭けた巨大プロジェクトを仕掛けていた。
1862年4月の発売日、パリの書店には夜明け前から市民が列を作った。労働者から知識人までが奪い合うように本を買い求め、数時間で数千部が完売。ヨーロッパ各国で同時翻訳出版が進むなど、近代的なベストセラー現象が巻き起こった。ラクロワが「!」としか返せなかったのも無理はない。それは単なる返信ではなく、出版業界の歴史が塗り替わった歓喜の叫びそのものだった。