彼のキャリアを辿ると、役者としての変幻自在ぶりに改めて驚かされる。かつてNHKで放送された連続ドラマ『ふたつのスピカ』での瑞々しい青年役で脚光を浴びて以来、彼は常に安易な道を選ばなかった。
重厚なサスペンスドラマで見せる暗濁とした影のある演技、あるいは日常の機微を描いた人間ドラマでの自然体な佇まい。一目見たら忘れられない眼差しと、低く響く声のニュアンスは、画面全体の空気感を一変させる力を持っていた。人間の持つ多面性や弱さを逃げずに表現できる稀有な存在感は、日本のエンタメ界において代わりの効かないピースだったと言える。