本作の最大の魅力は、希代のヒットメーカー・作詞家の阿久悠氏と作曲家の三木たかし氏が描いた、映画のワンシーンのような情景描写です。
「上野発の夜行列車」に揺られて青森駅に降り立ち、雪が舞う津軽の地から青函連絡船に乗り換えて北へと向かう孤独な女性の心象風景。冷たい海峡の海鳴り、凍えそうな冬の景色、そして津軽半島の最北端である竜飛崎(竜飛岬)へと視線が移り変わるドラマチックな展開は、聴く者の心を強く揺さぶります。
当時、東北新幹線はまだ開業しておらず(大宮〜盛岡間の開業は1982年)、東京から北海道へ渡るには上野発の夜行急行「八甲田」や「十和田」、特急「はつかり」を利用し、青森港から青函連絡船に乗るのが一般的なルートでした。移動そのものが長いドラマであった時代の空気感が、歌詞の隅々にまでリアルに息づいています。